業務効率を上げたい企業において、ITの導入は大きな効果をもたらします。しかし、当然ながらITを導入さえすれば業務改善ができるわけではありません。ITの導入で最も難しいのは、自社の課題は何なのか、そしてその課題を解決するために最適なITツールは何かを知ることです。この見極めを明確にできなければ、業務効率アップを実現することはできません。そこで今回は、業務改善を実現するためのITツールの選び方について考えてみましょう。
ITを導入したにもかかわらず成果が上がらない5つの理由
IT導入により一気に業務効率化を実現する企業もあれば、導入したにもかかわらずまったく成果が上がらない企業もあります。同じ施策をしているようにみえるのに、結果は正反対になってしまう。その原因は、主に次のようなことが考えられます。
-
自社の課題が明確になっていない
ITと一口にいっても、その種類はさまざまです。競合他社が使っているから、多くの企業で使っているからという理由だけでITを導入しても、必ずしも自社の課題解決に結び付くとは限りません。
-
IT導入が必要な部門の意見を無視する
ITツールを実際に活用するのは現場の担当者です。そのため現場で働いている社員が何に困っていて、何を求めているかをしっかりとヒアリングする必要があります。現場の意見を聞かずに情報システム部門だけで決定してしまうと、実際には不要だったり、必要な機能がなかったりすることがあります。
-
専門家に相談することなく自社内だけですべてを決めてしまう
ITを導入し、効率的に活用するには、全体を俯瞰して見る視点が必要です。そして、そのためには外部の専門家の意見が効果的です。自社内だけですべてを決めてしまうと、ツールを入れたことで生じるデメリットに気付くことができません。
-
実際には使わない機能も導入してしまう
いずれ使うかもしれないといった曖昧な判断で、しっかりとした見極めをせずにさまざまな機能を持つITツールを導入してしまうケースは少なくありません。実際にそうした機能を使うのであれば問題ありませんが、そうでない場合にはかえって業務が非効率になることがあります。
-
ITリテラシー教育が十分でないために社員が使いこなせていない
社員によってITリテラシーには差があります。そのためITリテラシー教育を十分に行わずにIT導入を進めてしまうと、属人性が生まれてしまい、業務効率化を進めることはできません。
業務効率化ツールを導入するうえでやるべき3つのポイント
上述したように、単に業務効率化ツールを導入しただけでは、業務改善を実現することはできません。そこで、前項で挙げた業務効率化が実現しない理由をもとに企業がやるべきことを考えてみます。
-
自社の課題を明確にし、それぞれの部門に何が必要なのかヒアリングする
情報システム部門の社員と現場の社員とで組織横断チームを作り、会社全体の課題をもとに、それぞれの部門で解決すべきこと、そのために必要なものを洗い出します。
-
各部門へのヒアリングをもとに信頼できる専門家に相談をし、最適なツールを選択する
それぞれの部門で必要なものが分かっても、それを連携しスムーズな業務を行うには、全体を俯瞰して見る必要があります。その役割は、社内の人間よりも客観性の高い外部の専門家のほうが適任です。
-
導入した業務効率化ツールを効果的に活用するために、ITリテラシー教育をしっかり行う
ITツールの導入で業務効率化が果たせたとしても、すべての社員が同様にツールを扱うことができなければ、いざというときに誰も使えないといったこともあり得ます。属人化を避けるためにも、ITリテラシー教育はしっかりと行うようにします。
課題別にみるおススメ業務効率化ツール
ここでは、課題別におススメの業務改善ツールを紹介します。
-
海外拠点を管理したい
会計業務パッケージ、IT環境の可視化など
-
部門間の連携を強化したい
ビデオ会議、Web会議、インスタントメッセージ、プレゼンス機能、チャットツールなど
-
通信コストを抑えたい
クラウドPBX、SIMフリーのスマートフォン、ネットワーク回線の見直しなど
-
多店舗運営を効率化したい
採用管理、離職防止、売上管理、店頭情報の可視化、優良顧客の創出など
ここで挙げたツールはあくまでも一般的な例です。例えば採用管理を導入したことで、無駄なコストを抑えられると同時に、部門間の連携もうまく取れるようになる場合もあります。ですから、ここで紹介した選択方法を参考に、信頼できる専門家に相談して最終的な判断をするといいでしょう。
なお、専門家に相談する際には、ただ漠然と相談してもうまくいきません。この課題を解決するためにこういうツールを使いたいという方針は最低限決めておきます。そうすれば、無駄な時間を省けます。
クラウドサービスを活用し、予算を抑えつつ業務効率化を
従来は資産・生産管理や財務会計、ワークフローなどの基幹システムなどを導入する場合、オンプレミスしか選択肢がなく、環境整備にかかる費用も高額になりがちでした。しかし、最近ではクラウドサービスの進化により、コストもかなり低減することができます。
そのため、仮に自社に合わなかったとしても、短期間でほかのツールに乗り換えることが容易になり、IT導入の敷居は大きく下がりました。もちろん容易になったとはいえ、考えなしに導入を進めてしまうと大きな損失をこうむることもあり得ます。そうしたリスクを避けるためにも、今回ご紹介した選択方法を参考に、ITツールの導入を検討されてみることをお勧めします。