IT TREND BLOGIoTが魔法の杖ではない理由

  • 2019年1月22日
  • グローバル展開
  • IoT業務活用

Gartnerの提示する先進テクノロジのパイプ・サイクルでは、IoTプラットフォームは既に『過度な期待』のピーク期を越えており、当初想定されていたよりも実用までの期間がかかるという予測になっています(2018年8月時点)。製造業をはじめ多くの企業では独自にIoTの活用にとりかかってきたものの、自社だけでの具体化は困難であるという現実に直面しているようです。特に日本国内だけでなくグローバル展開が既に進んだ企業では国内での平準化以上に“グローバル”というキーワードが更についてまわります。エッジ機器、ネットワークインフラ、クラウドプラットフォーム、分析アプリケーション…検討ポイントは山ほどあり、組み合わせは無限とも思われます。そんな中から何を重要視してどうIoTを活用していくべきかを段階的にご紹介します。

ゴールが見えないIoT
-まずは即効性のある使い方から-

ゴールが見えないIoT -まずは即効性のある使い方から- イメージ

多くの製造業が経営戦略上掲げている“国際展開”や“グローバル化”というキーワードに対して、最も即効性があるのは“生産現場の見える化”です。

最大限の効果を得るために現場から発生する各種の微細なデータを収集して企業経営に活用しよう!という大上段に構えて取り組まれようとされる企業も少なくないのですが、収集したデータをどのように活用しようか…何を目的にどんなデータを吸い上げようか…と考えるには多くの部門からの意見収集や経営的視点が必要になり、その分時間も手間も要します。部門横断型のプロジェクトチームを作ったものの何から始めようか…と悩まれるお客様が多く、ここに時間がかかってしまい、いつまでも経営課題が好転しません。
そんな時はまずは生産現場の“見える化”から取り掛かり、即効性のある効果が出る活用から始めることを強くお勧めします。
製品の多様化やプロセスが増えれば増えるほど、複数に絡み合った工程の中での障害箇所の特定は難しく熟練の技が必要になるといわれています。切り分けに時間を要するため、例えば海外向け販売製品の場合、地球の裏側の製造拠点への機器保守のために出向いて1か月も行ったきり…という話も製造業のお客様からよく聞く話です。
生産現場で問題が発生した場合、まずは手元の環境で適切な原因分析ができることで、解決までの時間と限られた優秀なエンジニアの工数を最小限に抑えることが可能となります。
効率化や生産性の向上の結果、自社の生産工数だけでなく、原因と解決にかかる時間が明確になることで製品を購入頂いたお客様への満足度向上という付加価値にもなります。
より多くの国のより多くの企業へ、お客様自社製品を効率よく販売展開していくには、人的コストの削減は経営課題解決の重要なファクターとなります。

デジタルトランスフォーメーションとIoT
-自社のビジネスにIoTが貢献する!?-

次なるIoT活用は、世界中どこにあっても、あたかも目の前に自社製品があるかのように“触れる”ことが重要となります。そのためのITインフラや方法の検討ではなく、本来時間を割くべき“IoTのビジネスへの活用”に集中することが最も大切なことだと考えます。ここでは遠隔保守の例でお話します。

デジタルトランスフォーメーションとは、現在人の手でやっていることをそのままシステムに置き換えるのではなく、システムを活用してビジネスプロセスを根本から改革することです。
海外の自社製品への遠隔保守成功のポイントは、初めから世界各国で技術基準適合証明(以下、技適)を取った製品やサービスをうまく活用し、“実現したいこと”の仕組みづくりに注力できるようにすることです。これまで見ることも触ることもできなかった地球の裏側の自社製品にすぐリーチできる、そんな夢の環境を実現することがゴールとなります。
しかし、日本では容易なこれら環境構築も、海外となるととたんに敷居が高くなるのをご存知でしょうか。例えば、海外での技適取得は費用と時間がかかるため日本ではうまくいった自社開発のメンテナンスツールやゲートウェイ機器が海外では利用できない、なんていうことはよくあることです。将来的にどの国・どの地域にまで市場を延ばすのか、という予測のもと先行して技適承認を取得していく作業は社内有識者や時には社外のコンサルタントなども交えた大きな労力を伴います。国によっては、技適承認を得るために毎年2か月間政府関係者の視察を受け入れ、視察団のアコモデーションまで自社で用意して…など多額の投資が必要なこともあります。
接続の仕組みだけでなく、そのインフラとなる通信環境についても、導入環境である顧客のネットワークを利用するのか、モバイル接続の仕組みを利用するのか。顧客設備と外部との通信について顧客セキュリティポリシーに照らし合わせて担保できる仕組みなのか。など、悩むべき選択肢は多く存在します。
遠隔から何ができることが望ましいのか、障害箇所切り分け、ログ収集・分析、など、これまでできなかったことの中から何を選びそのためにどのような環境を用意するのか、という点に時間をかけ、よりビジネス拡大や利益向上に役立つIoTの活用を見つけることが重要となります。

美しいビジネスサイクルを生み出すIoT
-未来のなりたい姿はここから開ける-

美しいビジネスサイクルを生み出すIoT -未来のなりたい姿はここから開ける- イメージ

“遠隔保守”のインフラは先に触れた“経営課題の見える化”にも寄与します。ベースとなる遠隔保守の仕組み(遠隔から見られる触れられる)に、データを取得・転送する仕組みを加えることで、より効率的な“遠隔保守”が実現でき、なおかつ、設備の置かれている環境と稼働に関するデータの収集を実現します。そうして集まったデータを更に活用することで経営課題解決にも活用できます。

ここまで、“生産現場の見える化”、“遠隔操作”と段階的にIoT活用についてお話してきました。これだけでも生産性向上に繋がりますが、IoTを更に効果的に活用するにはIoT導入で集めたデータを活用して、課題が起きる前の予兆を見つけることで経営リスクを更に抑えることができます。
例えば、微小なセンサーデータを取得・転送することができる機器を工場内に複数設置し設備のモニター(監視)を常時行えるようにします。クラウド設備に転送された異常データを検知したタイミングで、収集データの分析結果から遠隔保守接続により当該センサー箇所をピンポイントで確認、保守を行うことができます。大量のデータを常時取得できるようになると、データ値の傾向を捉えることができるようになります。すると、問題が発生する前に起きる通常とは異なる“小さな変化”に気づくことができます。
大きな生産設備になると、複数ある設備中不具合箇所を検知するためには、事象から推測する熟練の“勘”が効率化には必要になります。経験値の少ない若手にとっては針の山に落ちた髪の毛を探すような苦労があると聞きます。針の山のどの部分に落ちているのか、いつ、落ちたのか、という細かな情報を、センサーデータから解析、そのタイミング・箇所の大きなログデータを分析することにより、障害箇所の特定までの時間が飛躍的に短縮されます。
“小さな変化”に気づくこと、これはデータを溜め込んだIoTが大活躍できるところです。経験値の高い職人に頼っていた判断を理論的に理解でき、経験の浅い人間でも同等の判断を行うことができるようになります。
また、生産システムなどの設備内のログデータ(故障情報)以外の、環境データも同時に収集することで、故障率や複合的な原因からの障害に関する情報を収集することができるようになります。自社内の研究開発環境、検証環境が世界中にあるかのような膨大な生の情報(Big DATA)を収集することができるようになるのです。それらBig DATAから、次に目指す方向・実現したい姿を見出すヒントを引き出す…IoTにより、よいサイクルを生み出すことができるようになります。

IoTは漢方薬のように長く地道に付き合うと良い効果がでます

残念ながらIoTツールを導入しさえすればすぐ効果が出るというものではありません。何故ならIoT活用に必要なのはシステムだけでなくそこで収集したデータとその活用方法が効力を発揮するからです。
企業の特性によっては効果の表れ方も違います。しかし長く見守りながら活用していくことで、漢方薬のように確実に効果が出てきます。当然、漢方薬の最適な効果が出るためには適切な指導をしてくれる漢方医にしっかりと症状を伝え、アドバイスを基に二人三脚で歩んでいく必要があります。
経営側からするとすぐ効果が出ないことで導入を諦めてしまうことも有るかもしれませんが、嬉しいことに世の中ではIoT活用で確実に成果が出ている企業も増えてきました。
もちろん企業としてはすぐ目に見える成果も必要でしょう。そんな時はまず生産現場の見える化、遠隔操作、と直近の課題を解決しつつ、収集したデータから生産の現場以外のリモートエキスパート活用や若手育成、へき地での情報共有など段階的に企業にとって効果の出る順番で活用できる便利なインフラです。
世の中で謳われているよりも意外と地味ではありますが、夢のある活用方法が続々と生まれつつある状況から目が離せません。